ハイドロポニック・システムは水と肥料、つまり培養液で植物を育てるためのものです。 培養液だけで植物を育てるには最低限の知識が必要ですが、少しの管理と観察だけで小さなスペースでも最大限の収穫が可能なうえ、低コストで環境にやさしく、クリーンな栽培方法です。日本のように限られた農地面積であっても高効率の収穫が可能で安定した利益が得られるので、現在日本のスーパーで売られているレタス、トマト、イチゴの約80%が、ハイドロポニック・システムを活用した施設栽培で生産されています。

Image
ハイドロポニック入門

ハイドロポニック・システムならば、限られたスペースであっても、野菜やハーブが早く元気に育ってたくさんの収穫が楽しめて、水の節約にもなる — これほど素晴らしいことはないでしょ?

とはいえ、あらゆるタイプのハイドロポニック・システムの構造を正確に理解し、魅力的で千差万別なガーデニング方式に足を踏み入れることは簡単ではありません。この記事では —あなたに最適なシステム選びに役立ててもらうために— システムの種類、メリットとデメリット、それぞれのシステムに適した植物、基本的な管理方法を簡単に説明します。

どのシステムがあなたにとってよいのかは、次の要素で決まります — 栽培面積、日照条件、セットアップとメンテナンスに費やせる時間と予算など。各システムには、それぞれ違ったメリットがあり壁で育てられる手軽なものから、一般的な1m² 以上の床面積に適したものまであり、栽培面積によって設置可能なシステムの大きさが決まります。

すべての植物には光が不可欠なので、日照条件は重要な要素です – 太陽光が利用できるならそれに越したことはありませんが、それができない場所では園芸用のライトを設置すれば、植物を効率よく最大限に育てることができます。必要な費用はシステムの大きさや種類によりますが、満足いく収穫を楽しむには、だいたい数百ドルからそろえられます。いったんすべての設備を設置すれば、キーである培養液だけきちんと管理すれば、ハイドロポニック・システムのメンテナンスはとても簡単です。

費やした予算と時間を最大限に活用するためにも、最適なシステム選びが最も重要なポイントです。 小売店 に相談することもお勧めです。それでは一般的なハイドロポニック・システムを紹介していきます。

Image
ハイドロポニック入門

Run-to-Waste (かけ流し式)

Run-to-Waste (かけ流し式) システムは一般的な土壌栽培のように、培養液が排水されると地面や容器に捨てて、再循環させません — 他のシステムと一番大きく異なる点です。

このシステムには、COCO培地やロックウールなど保水性が高い培地が適しているので、ポンプが故障して植物が水切れを起こすというトラブルは、あまり起こりません。Run-to-Wasteシステムは、ポッティング・ミックス培土栽培のように初心者でも培養液の管理がしやすいだけでなく — 収穫率が高くなります。

このシステムの仕組みは、フラッド&ドレインのように水中ポンプとタイマーで定期的に培養液を給水しますが、排水された培養液をリザーバーに戻さずシステムの外に捨てるため、フラッド&ドレインと比較して培養液の量も給水の回数もはるかに少なくなります。このシステムは、草丈が大きく生長する夏野菜の栽培にも最適です。

Image
ハイドロポニック入門

フラッド&ドレイン (Ebb & Flow)

フラッド&ドレイン、またはエヴ&フロウと呼ばれるシステムは、給水の設定に少しコツが必要で、コストもかかりますが、きゅうり、インゲン、トマトなど様々な野菜の栽培に適しています。

このシステムは、リザーバータンク内の循環ポンプで培養液を一定間隔でくみあげて(フラッド)、培地に給水したあとリザーバータンクに培養液が戻る(ドレイン)しくみです。培地内の水分量が減るにつれて根は水を求めて伸びる、をくり返すことで生長が促されます。根量が増えるほど、より多くの養分を吸収するようになるので、プラントはより健康で元気に生長します!

このシステムに必要なパーツは、リザーバータンクと栽培トレイのほかに、循環ポンプ、タイマー、培養液の給水と排水をおこなうホースです。もっとも重要でコツがいるのは、フラッドをおこなう時間の間隔とドレインにかかる分数が適切になるようタイマーを設定することです。培養液は1週間ごとに交換するので、その間にpH値や肥料濃度EC値の調整が必要になることもあります。また、培地や育てる植物の種類、生長段階、季節など環境によってもフラッドすべきタイミングが変わります。

Image
ハイドロポニック入門

薄膜型栽培 (Nutrient Film Technique = NFT)

NFTは、ハーブ、ホウレンソウ、ラディッシュなどの栽培期間40日ほどの短期サイクルで収穫する葉もの野菜や、根張りが浅い植物の栽培に適しています。フラッド&ドレイン・システムとは真逆で、常時ポンプを作動させてリザーバーから培養液を給水します。そのためタイマーは必要ありませんが、故障に備えて循環ポンプは2台、リザーバータンク内に酸素を供給するエアーストーン、給水チューブと、NFTチャネルとよばれる長細いトレイが必要です。

非常に栽培効率の高いすばらしいシステムですが、培地を使わないため(培養液の膜にそって根がダイレクトに伸びる)、もしポンプが故障してしまうと植物はあっという間に水切れを起こしてしまいます— とはいえ、根がむき出しなので根のトラブルを早期に発見できます!

Image
ハイドロポニック入門

湛液型栽培 (Deep water culture = DWC)

DWCシステムは、タンク内の酸素豊富な培養液に植物の根をダイレクトに浸らせて育てます。もっともシンプルな構造のハイドロポニック・システムのひとつであり、必要なパーツは底の深いリザーバータンク(容量が大きくなるほど、培養液と水温が安定しやすい)、エアースーンとエアーポンプ(吐出量が大きくなるほど根の生長が早くなり根の変色が防げる)、ネットポット、そしてクレイペブルスをはじめ植物に適した培地、これだけです。

低コストで作れるうえ生長が早いシステムですが、水温、pH、培養液の量などのメンテナンスがほぼ毎日必要です。また、ブロワーなど吐出量が大きなポンプを使わないと根が伸びにくくなり、水温が上がると根が褐色に変色し根腐れが発生しやすくなります。DWCシステムは、レタスなど葉もの野菜やハーブなど40日前後で収穫できる植物の栽培が適しています。

Image
ハイドロポニック入門

エアロポニックス

エアロポニックスは、もっとも構造が複雑なハイドロポニック・システムのひとつであり、熟練したガーデナー( または時間とお金にゆとりがある人! )向けです。

環境にやさしく、小さなスペースでもたくさんの植物(イチゴやトマトなど)を効率よく栽培できるシステムですが、ポンプなど電気機器の故障で根が水切れを起こすと、植物があっというまに枯死してしまうので、バックアップ機器を設置するなどの高度な防止用セットアップが必要です。

エアロポニックスのテクニックは、空中にさらした植物の根に数分おきに培養液を噴霧させるので、酸素、水、肥料の吸収量が多くなり生長がとても早くなります。

ウイッキング

ウイック・システムは、部屋でスプラウトやハーブを育てるための最も安くて手軽な栽培方法のひとつで、ハイドロポニック栽培の入門システムに最適です。(注意が必要なのは、トマトなど根が強く水切れを起こしやすい植物の栽培には向いていないということです)。

水を溜められるトレイの上に、パーライトやCOCO培地など、土壌以外の培地を入れた栽培トレイを直接重ね、上下ふたつのトレイをウイック(ヒモ、糸、細い布など水を吸い上げられる材質のもの)でつなぎ、栽培トレイに培養液が吸い上げられるようにするだけです。日当たりのよい場所に設置して、培養液の減り具合に合わせて補給し、残留肥料が多くなりすぎないように2〜3週間に一度水で培地をフラッシングします。

Image
ハイドロポニック入門

栽培管理のコツ

  • CANNA の肥料を使ってください — CANNA AQUAやCANNA COCOなどのラインナップから、培地とシステムの種類に合わせて最適な肥料が選べます。ハイドロポニック栽培に理想的な水温は20C°前後、湿度は40–60%が最適です。
  • CO2をおぎなうために、ファンを回したり窓を開けて新鮮な空気を循環するようにしましょう。(植物の生長を促進します)
  • ハイドロポニック栽培では、ほとんどの植物は弱酸性のpH (5.8 〜 6.2)が適しています — 高めのpHで元気に育つ植物もあるので、育てる植物が好むpH値を確認してください。
  • 光は重要です—日当たりは1日に最短でも6時間、できれば12〜18時間(太陽光とグロウライトのどちらでも)当たる環境を保ってください。
  • 園芸用のグロウライトを使う場合は、植物に近づけすぎないよう注意し、最適な距離を保つようにしてください。また、最適な光の強さと長さは植物の生長段階で変えなくてはならないことも覚えておきましょう。夏に花が咲く植物には開花させたいタイミングで日照時間を短くし、冬に花が咲く植物には日照時間を長くします。
タグ :