夏至から約1か月が過ぎたころは、まだ真夏の雰囲気を感じるものの、日照時間はすこしずつ短くなります。光の強さは植物の生長にダイレクトに影響しますが、それだけでなく光の質(色など)も大きな影響を与えます。この記事では、光に関する基本用語、植物と光の関係、光の色による植物への影響について詳しく見ていきましょう。そうすれば、今度ライトの光に照らされた植物を見る時、さらに深く観察できるはずです。
植物の生長に必要な光の強さ
可視光は400〜700ナノメートル(nm)の波長を持ち、これは虹のスペクトルとほぼ一致します。植物は可視光を吸収しますが、光合成に特に有効な400〜700nmの範囲は、園芸分野では光合成有効放射(PAR:Photosynthetically Active Radiation)として分類されます。また、植物は可視光よりも短い400nm以下の紫外線(UV光)を直接光合成には利用しませんが、特定の生長作用や免疫に影響を及ぼします。
光は波動として伝わります。それと同時に、粒子のようにエネルギーを与える性質も持っています。この特性は、アインシュタインやプランクなどの20世紀初頭の量子物理学者によって「波動・粒子二重性」として確立されました。この概念は、形而上学や生命の多様性についての議論を引き起こすことが多いのですが、今は話を可視光に戻しましょう。可視光は『光子(フォトン)』として吸収されます。光子は光の最小単位(量子)を表し、一定の面積に一定時間あたる光子の数を測る指標が「光量子束密度(Photon Flux Density, PFD)」です。その中でも、植物が光合成に利用できる波長域(400〜700nm, PAR)に限定して測定する指標が「光合成光量子束密度(PPFD:Photosynthetic Photon Flux Density)」です。つまり植物が生長するためには、光合成に有効な光波長域(PAR)だけでなく、一定以上の光の強さ(PPFD)も必要なのです。

植物にはそれぞれ「光飽和点」があり、それ以上の光を受けても光合成効率を上げることができません。この光飽和点は、植物の生長段階、種類、栽培方法によって異なります。
適切な光強度の目安は、一般的に苗や葉物野菜(レタスなど)が100~300 µmol/m²/s 、大きめの植物が400~600 µmol/m²/s、成熟した丈夫な植物が900 µmol/m²/s、さかんに生長している段階の植物は最大1,500 µmol/m²/s が最適と言われています。参考までに、真昼の直射日光は最大2,000 µmol/m²/sに達することもあります。
栽培環境を調整できれば、光飽和点の上限を引き上げて光合成効率を高められます。
例えば、CO₂濃度を通常の400 ppmから800~1000 ppmに増やすと、植物はより強い光を効率的に利用できるようになり、光合成が促進され(=生長速度がアップ!)ます。しかし、光飽和点を引き上げるためにCO₂を増やす場合は、最適な温度管理が必須です。植物が最大限にCO₂を活用し光合成効率を高めるためには、温度を通常より高めにしなくてはなりません(ただし、植物の種類に応じた適温の範囲内であること)。
つまり、CO₂濃度・光強度・温度の3つの要素をバランスよく調整することで、植物の代謝が活発になり、成長がより促進されるのです。
光の色が植物の生長と収穫に及ぼす影響
赤色 (600-700 nm) から遠赤外線 (700-750 nm) の光範囲
フルスペクトルのCMH(セラミック・メタルハライド)ランプで植物を育てているとします。CMHランプの光に含まれる赤色光は、植物の代表的な光合成色素であるクロロフィルAとBが効率よく吸収する色です。これらの色素は、光合成のエネルギー生成を担う重要な役割を果たします。クロロフィルAとBが光子を受け取ると、そのエネルギーをATP(アデノシン三リン酸)とNADPH(ニコチン・アミド・アデニンジ・ヌクレオチドリン酸)に変換します。これらの物質は、エネルギーの「通貨」として代謝プロセスのさまざまな場面で使われ、最終的に炭水化物の生成へとつながります。

グロウライトから直接照射された赤色光はフィトクロム色素(Pr)に吸収され、遠赤色光は植物の表面に反射して拡散され、日陰のエリアに多く届きます。遠赤色光は、Prの兄弟であるフィトクロム(Pfr)によって吸収されます。 Pfrが遠赤外光を吸収すると、Prに変換され、その逆も起こります。PfrとPrの比率はフィトクロム光定常状態(PSS:Phytochrome Photostationary State)として知られ、植物がどの程度日陰にいるのかを感知するのに役立ちます。その結果、日陰にある植物は茎を伸ばし、節間距離を広げ、光源に向かって生長しようとします。また、光合成を増やすために、より多くの葉緑素を生成しようとする促進する効果もあります。
植物体で赤色光を最も多く受けた部分は、光吸収を最大限に吸収して光合成するために、枝の分岐を増やし、節間を短くします。この現象をフィトクロムの側から説明すると、より背が高く、より多くの光があたる植物の部分が赤色光を吸収するとPrをPfrに変換し、Pfrが一定以上の濃度に高まるので枝が分岐しはじめる、という流れになります。
植物はPrとPfrの変換を通じて光周期を感知し、開花のタイミングを決定します。夜間には遠赤色光の割合が増え、PfrがPrに変換されます。夜が長いほどPfrの濃度が低下し、短日植物(タバコや綿花)の開花が促進されます。反対に、長日植物(ケシやエキナセア)は、一定量のPfrが残ることで開花します。日中性植物(キュウリ、エンドウ、バラ)は光周期に関係なく開花します。また、赤色光をサプリメント的に当てると、テルペノイドやポリフェノールなど健康に良いファイトケミカル(二次代謝産物)の生成増加や、花付きを促進する効果があると言われています。
緑色光 (500-600nm)
ほとんどの緑色光は植物の表面で反射されるので、あまり吸収されない光の色ですが、最大限に生長するためには欠かせない光なので、ゼロにしてしまうと植物の白化(ブリーチング)や、育ち方に奇形が生じることがあります。緑色光は葉の奥深くまで浸透し、表面にある葉緑素(クロロフィル)を超えて、より内部に存在するカロテノイド色素に吸収されます。カロテノイドは、受け取った光エネルギーを葉緑素に受け渡したり、逆に葉緑素からエネルギーを受け取ったりすることで、全体的なエネルギー吸収量を増やし、光合成を促進する役割を果たします。また青色光は、風味や品質を高める作用がありますが、緑色光はその効果を抑制する要因になることがあります。
植物の生育に最適な光スペクトルの組み合わせを考える際には、これら緑色光の作用のメリットとデメリットのバランスを考慮することが重要です。
青色光(400-500 nm)
青色光は、フォトトロピンやクリプトクロムといった光合成色素によって吸収されます。
これらの色素が青色光を吸収すると、光源からもっとも遠い位置にある植物細胞内のオーキシンが反応を起こします。この反応によって、日陰になった側の細胞が伸びるので、植物が光の方向に曲がる「光屈性」という現象が起こります。光合成色素クリプトクロムは、青色の光吸収のほかに、発芽や苗の生長を制御する役割があり、栄養生長(生長期)から生殖生長(開花期)への移行を促す働きをします。

青色光は気孔の開閉を調節します。気孔は葉にある小さな開口部で、蒸散と二酸化炭素(CO₂)の交換を制御し、光合成にとって重要な役割を果たします。基本的な光合成には、1~2 µmol/m²/s の低強度の青色光が必要です。一般的に、青色光は植物の生長に影響を与え、葉をコンパクトにし、より小さく、厚く、濃い緑色にする傾向があります。このような生長調整剤の効果が高い青色光は、実際に栄養生長(生長期)段階で非常に多く使われます。
さらに、青色光は「赤色光」とおなじく、クロロフィルAとBにとてもよく吸収されて、エネルギー生産、光合成、糖の貯蔵に大きな影響を与えます。
研究により、赤色光と青色光を補助的に照射すると、ファイトケミカルの種類と含有量を増やす効果があることがわかっています。また、青色光や紫外線など波長が短くエネルギーが高い光は、葉を紫色に変える抗酸化物質「アントシアニン」の生成を促進します。

紫外線(100-400nm)
紫外線(UV)は光合成有効放射(PAR)の範囲外ですが、植物にとって重要な影響を与える光です。UV光はフォトトロピンとクリプトクロムによって吸収され、その作用によって節間が短く、葉が小さく厚くなり、分枝が増えてコンパクトな生長を促します。UV光と青色光は、どちらも波長が短く、エネルギーの強い光です。植物は、強いエネルギーを持つ光線から身を守るために、抗酸化成分であるアントシアニン、フラボノイド、カロテノイドなどのファイトケミカルをより多く生成するよう促されます。これらのファイトケミカルは、害虫への抵抗力を高める働きもあります。とはいえ、強いエネルギーをもつUV光は、酸化力が高く有害であるので、注意が必要です。UV光は植物のDNAや細胞膜にダメージを与えることもあるので、1日あたり4kJ/m²以上の照射は避けることが推奨されます。また、UV光を扱うときは、必ずUV/ブルーライトカットのサングラスを着用し、裸眼では絶対に光を直視しないよう気をつけましょう。さらに、素肌をUV光から守るために長袖の着用をお勧めします。

未来への光を照らす
一般的に植物は、虹に含まれる光の全色を吸収して、健康に生長します。そのなかでも特定の光の色は、生長段階、開花段階、草姿(育ち方)、花付き、ファイトケミカルの生成を促進する効果があります。また、より高い光合成効率を引き出すには、単色の光だけ放射するよりも、複数の光色を組み合わせることが重要です。さまざまな種類のグロウライトが開発され実用可能となった今日では、グロワーは個々のニーズに合わせて柔軟にライトを選択し、組み合わせ、セッティングができるようになりました。
この技術は今も進化を続けており、植物育成専用のライト・システムの性能も日々進歩しています。