ポッティングソイルの構造(三相分布)のうち、液相率と気相率によって「植物の根が、どれだけ水分と空気を吸収できるか」が決まります。培地中の空気量を示す気相率が重視されるのは、植物の根ばかりでなく根域で活動する微生物にとっても空気量が重要となるからです。

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根は酸素を吸って、生長または根の修復、そして水分や肥料養分の吸収を行ないます。とくにホビーガーデンで人気のある短期作物タイプの野菜の栽培では、空気を多く含める気相率の高い培土を使うことが、とても重要です。栽培期間が短めな短期作物は、生育初期に根が酸欠を起こすと、根の発達が止まるため、大きく育たず収量がわずかで終わってしまいます。栽培室の内部や外部から流動してきた空気(酸素)は、培地内部の大きめな孔隙(こうげき)を通り、根の表面から吸収されます。

ポッティングソイルの液相率や気相率は、水やりしていくうちに低下していくこともありますが、それはポッティングミックスに使われた有機素材の品質によって左右されます。ベストなソイルレス・ポッティングミックスには、長期間変質しにくく耐久性のあるヴァージン・ピートが使われるため液相率・気相率が安定します。

ブロックカットとシェービングオフ。採掘法で変わる品質

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ピート層の採掘には、2つの方法があります。ピート層の表面から削っていく「シェービングオフ」掘削法は、コストが安く抑えられる変わりに作業効率がよくありません。さらにシェービングオフで採掘されたピートは、繊維が細かくなりすぎてしまい、水分と空気のバランスが悪い培土になります。

もう一方の「ブロックカット」採掘法は、ピート層をサイコロ状に切り出す方法で、もっとも伝統的な採掘方法です。昔からピートは燃料として使われており、各家庭の料理や家の暖房には、この方法で採掘されたピートブロックが利用されていました。サイコロ状に切り出されたピートブロックは、採掘後に手でひっくり返しながら乾燥させなくてはならないため「ブロックカット」はコストがかかる採掘方法です。

しかしピートの繊維が長いほど、水分と空気のバランスがよく保てるため、植物の根張りがよく健康に育ち、水やりによる培地の圧縮が起こりにくくなります。

 

高位ピートと低位ピート

ピートは、ポット用培土によく使われている素材です。ピートは1世紀以上前の植物が堆積してできた天然の素材です。ピート層が形成される地域の気候では、枯死した植物が土に還るよりも早く、新しい植物が発生します。このプロセスは、途方もなく長い年月にわたって少しずつ、しかし確実にすすみ積み重なってき、ついには数メートルにもなる有機質の地層ができ上がりました。

ピート層は、下層を低位ピート、上層を高位ピートと種類が分けられています。水位が高く栄養分を豊富に含む湿地帯などで、最初にヨシなどの水生植物が枯死して泥炭が積もりはじめ低位ピートが形成されました。そのためほとんどの低位ピートには、腐朽成分が多く含まれ、ヘドロ状の沈泥が多く混ざっています。砂や有害な塩基も多く含まれているため、高品質のポッティングソイルの素材には向いていません。高位ピートは、低位ピート層のうえに植物がつぎつぎと積み重なるように発生してできたピート層のため、栄養分が少なく、ふれる水分が雨水だけになった結果、「スパグナムモス(水苔)」くらいしか生息しなくなったエリアで形成されたピート層です。この高位ピート層には、スパグナムモスだけでなく、様々な草や木の枝、葉なども一緒に混ざっています。

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スパグナムモス(ミズゴケ属のコケ植物)

天然素材のスパグナムモスは、クリーンで軽いため扱いが簡単で、栽培用培地に非常によく向いています。肥料成分をわずかに含み、pH値は3.5~4.5、保水力に富み、最高で本体重量の20倍もの水分を吸収することができます。ドイツ北西部の平坦なピート層地形にできた高位ピートの断層からは、ピート層が形成された年代ごとに質が変化するのがはっきりと分かります。

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